「サイト、真っ白になってますよ!」
朝8時。クライアントからのモーニングコールで、僕の眠気は一瞬で吹き飛んだ。いや、血の気が引いた、という方が正しいかもしれない。
慌ててPCを起動し、問題のサイトにアクセスすると、そこには「現在メンテナンス中のため、しばらくの間ご利用いただけません。」という、見慣れた、しかし今は憎しみしか感じないメッセージが表示されていた。WordPressのアップデートに失敗した時に出る、アレだ。
「なんで?昨日の夜までは普通に動いてたのに…」
原因は、すぐに分かった。WordPressの自動更新だ。夜中のうちに、WordPressコアのメジャーアップデートが自動で実行され、それが原因で、一部の古いプラグインがエラーを吐き、サイト全体がクラッシュしていたのだ。
幸い、バックアップからすぐに復旧できたから大事には至らなかったけど、あの時の冷や汗と、クライアントへの平謝りは、今でも忘れられない。「便利」だと思っていた機能に、足をすくわれた瞬間だった。
こんにちは!WordPressの自動更新機能に、一度は天国を見せられ、そして地獄に突き落とされた経験を持つ、Web開発者の僕です。
今日は、WordPressサイトを運営するすべての人にとって、他人事ではない「自動更新」という、諸刃の剣について、そのメリットとデメリット、そしてプロが実践する「失敗しないための設定方法」まで、僕の失敗談を交えながら、徹底的に、そして正直に語っていこうと思う。
「自動更新って、ONにしておけば安心なんでしょ?」なんて思ってるあなた。その考え、マジで危険かもしれないよ。
WordPressの自動更新とは? そもそもどんな機能?
まず、基本からおさらいしよう。WordPressの自動更新機能は、その名の通り、WordPressのコア、プラグイン、テーマの新しいバージョンがリリースされた時に、自動でアップデートしてくれる機能のことだ。WordPress 3.7から、コアのマイナーアップデートがデフォルトで自動更新されるようになったんだよね。
ここで重要なのが、「マイナー」と「メジャー」の違いだ。
- マイナーアップデート (例: 6.4.1 → 6.4.2)
 - セキュリティ修正や、小さなバグ修正がメイン。
 - 機能的な変更はほとんどないため、互換性の問題が起きる可能性は低い。
 - デフォルトで自動更新が有効になっている。
 - メジャーアップデート (例: 6.4 → 6.5)
 - 新機能の追加や、大規模な仕様変更が含まれる。
 - 互換性の問題が起きる可能性が、マイナーアップデートに比べて高い。
 - デフォルトでは自動更新されない。(設定で有効にできる)
 
そして、プラグインとテーマも、個別に自動更新を有効にするかどうかが選べる。つまり、僕たちは、コア(メジャー/マイナー)、プラグイン、テーマ、それぞれの自動更新をどうするか、自分で判断しなきゃいけないってことなんだ。
なぜ自動更新が必要? 3つの大きなメリット
じゃあ、なんでこんな「おせっかい」な機能があるのか。もちろん、それには大きなメリットがあるからだ。
メリット1:セキュリティの向上(これが一番デカい)
これが、自動更新機能が存在する最大の理由だ。WordPressの脆弱性のほとんどは、発見から数時間以内に攻撃が始まると言われている。つまり、アップデートの適用が1日遅れただけで、ハッキングの被害に遭う可能性が格段に上がってしまうんだ。
特に、セキュリティ修正が含まれるマイナーアップデートは、リリースされたら即座に適用するのが鉄則。これを自動でやってくれるんだから、これほど心強いことはないよね。
僕の知り合いのフリーランスは、クライアントのサイトを20個くらい一人で管理してるんだけど、昔は毎朝、全サイトにログインしてアップデートがないか確認するのが日課だったらしい。「自動更新のおかげで、その時間がまるまる浮いた。マジで神機能」って言ってたよ。
メリット2:手間と時間の削減
これも、サイト運営者にとっては大きなメリットだ。複数のサイトを管理している人なら、なおさらだよね。毎日、あるいは毎週、管理画面にログインして、ポチポチとアップデートボタンを押す作業。これ、地味に面倒くさい。
自動更新を有効にしておけば、この面倒な作業から解放される。僕たちは、もっとクリエイティブな、本来やるべきことに時間を使えるようになるんだ。
メリット3:常に最新の機能を利用できる
WordPressは、今もすごいスピードで進化し続けている。メジャーアップデートでは、ブロックエディタの新しい機能や、サイト全体のパフォーマンス改善など、魅力的な機能がたくさん追加される。
自動更新を設定しておけば、こうした最新の恩恵を、いち早く受けることができるんだ。
なぜ自動更新が危険? 3つの恐ろしいデメリット
ここまで聞くと、「じゃあ、全部自動更新ONでいいじゃん!」って思うよね。でも、話はそんなに単純じゃない。僕が体験したように、自動更新には、メリットを吹き飛ばすほどの恐ろしいデメリットも潜んでいるんだ。
デメリット1:互換性の問題(サイトが壊れる最大の原因)
これが、僕が体験した悪夢の正体だ。WordPressのコアがアップデートされても、使っているプラグインやテーマが、その新しいバージョンにまだ対応していないことがある。
特に、メジャーアップデートで大きな仕様変更があった場合、古いプラグインはエラーを吐いて、サイトの表示を崩したり、最悪の場合、サイト全体をダウンさせたりするんだ。
考えてみてほしい。あなたが寝ている間に、WordPress君が勝手に「よーし、最新バージョンにしといたぜ!」って家の土台をリフォームしたとする。でも、そのせいで、今まで使ってたドアや窓枠のサイズが合わなくなって、家全体が歪んでしまった…みたいな状況だ。マジで、笑えない。
デメリット2:予期せぬ不具合
これは、プラグインやテーマのアップデートでよく起こる。開発者が良かれと思って追加した新機能に、実はバグが潜んでいて、それが原因でサイトがおかしくなるケースだ。
正規のアップデートでさえ、こういったことは稀に起こる。それを、自分の知らないうちに、自動で適用されてしまう。これって、結構なリスクだよね。
僕も経験があるけど、ある日突然、お問い合わせフォームからメールが届かなくなったことがあった。調べてみたら、前日に自動更新されたフォームプラグインのバグが原因だった。気づくのが遅れてたら、何件のビジネスチャンスを失ってたか…と考えると、今でもヒヤッとする。
デメリット3:カスタマイズの上書き
これは、特にテーマのカスタマイズをしている場合に注意が必要だ。もし、あなたが「子テーマ」を使わずに、テーマのPHPファイル(functions.phpとか)を直接編集していた場合、テーマが自動更新されると、そのカスタマイズはすべて上書きされて消えてしまう。
「あれ、昨日追加したはずの機能が消えてる!」なんてことになりかねない。まあ、そもそもテーマファイルを直接いじるのは非推奨なんだけど、ついついやっちゃう人もいるからね。自動更新は、そんな人に最後の一撃を食らわすことがあるんだ。
プロが実践する!失敗しないための「黄金設定」
じゃあ、メリットとデメリットを理解した上で、僕たちプロはどうやって自動更新と付き合っているのか。僕が推奨する「黄金設定」を教えよう。
| 対象 | 自動更新の推奨設定 | 理由 | 
|---|---|---|
| コア:マイナー | ON(必須) | セキュリティリスクを最小限にするため。互換性の問題もほぼ起きない。 | 
| コア:メジャー | OFF(推奨) | 互換性の問題が起きる可能性が高い。ステージング環境でテストしてから、手動で適用すべき。 | 
| プラグイン | ケースバイケース | 信頼性が高く、更新頻度が高いプラグイン(例: Jetpack, Yoast SEO)はON。それ以外、特にEC系や予約系など、サイトの根幹に関わるものはOFF。 | 
| テーマ | OFF(強く推奨) | サイトのデザインに直結するため、予期せぬ変更は避けるべき。特に子テーマでカスタマイズしている場合は絶対にOFF。 | 
これが、僕が考えるベストバランスだ。
セキュリティの要である「コアのマイナーアップデート」は自動化して、常に最新の状態を保つ。
でも、サイトが壊れるリスクがある「コアのメジャーアップデート」や「テーマのアップデート」は、必ず手動で行う。事前にステージング環境(本番そっくりのテスト環境)で動作確認をしてから、慎重に適用するんだ。
プラグインは、一番判断が難しいところ。僕の場合は、Automattic社製のものや、レビュー数が多くて更新が頻繁な、信頼できる開発元のプラグインだけを自動更新ONにしてる。それ以外は、アップデート内容をちゃんと確認してから、手動で更新するようにしてるよ。
具体的な設定方法:wp-config.phpを編集しよう
「じゃあ、その黄金設定って、どうやってやるの?」
一番確実なのは、wp-config.phpファイルに数行のコードを追記する方法だ。WordPressの管理画面からも設定できるけど、コードで管理した方が、後から見返した時に分かりやすいからおすすめだよ。
wp-config.phpは、WordPressのルートディレクトリにある、超重要な設定ファイルだ。編集する前には、必ずバックアップを取ってね!
1. すべての自動更新を無効にする(非推奨)
// すべての自動更新を無効化
define( 'AUTOMATIC_UPDATER_DISABLED', true );
これを追記すれば、すべての自動更新が止まる。でも、セキュリティリスクが跳ね上がるから、基本的には非推奨だ。
2. コアの自動更新を制御する(これが本命)
// コアの自動更新を制御
define( 'WP_AUTO_UPDATE_CORE', 'minor' );
これを追記するのが、僕が推奨する「黄金設定」だ。`
‘minor’` に設定することで、「マイナーアップデートのみ自動」という状態になる。
ちなみに、ここを true にすると、メジャーアップデートも含めてすべて自動更新される。false にすると、コアの自動更新はすべて停止する(非推奨)。
3. プラグインとテーマの自動更新を制御する(functions.php)
プラグインとテーマの自動更新は、テーマの functions.php にフィルターフックを追加することで、より細かく制御できる。
// すべてのプラグインの自動更新を無効化
add_filter( 'auto_update_plugin', '__return_false' );
// すべてのテーマの自動更新を無効化
add_filter( 'auto_update_theme', '__return_false' );
__return_false は、常にfalse(偽)を返すWordPressの便利な関数だ。これをフックにかけることで、「プラグイン(またはテーマ)を自動更新しますか?」という問いに対して、常に「いいえ」と答えることができるんだ。
逆に、特定のプラグインだけを自動更新したい、なんていう高度な設定も可能だけど、まずはこの基本のON/OFFを覚えておけば十分だよ。
もし自動更新でサイトが壊れたら? 落ち着いて対処する3ステップ
僕のように、自動更新でサイトが壊れてしまったら…? 想像しただけでパニックになりそうだけど、落ち着いて対処すれば大丈夫。そのための手順を教えるね。
ステップ1:メンテナンスモードを解除する
まず、サイトのルートディレクトリに生成されている .maintenance というファイルを削除しよう。これを削除するだけで、サイトは表示されるようになる(ただし、エラーが出ているはず)。FTPクライアントか、サーバーのファイルマネージャーを使って削除してね。
ステップ2:原因を特定する
次に、何が原因でエラーが起きているのかを特定する必要がある。サーバーのエラーログを確認するのが一番確実だけど、難しければ、デバッグモードを有効にしてみよう。
wp-config.phpに以下のコードを追記すると、画面にエラーメッセージが表示されるようになる。
define( 'WP_DEBUG', true );
define( 'WP_DEBUG_LOG', true );
define( 'WP_DEBUG_DISPLAY', false );
これで、どのプラグインの、どのファイルの、何行目でエラーが起きているのかが分かるはずだ。
ステップ3:バックアップから復元する
原因が特定できても、自力で修正するのは難しいことが多い。一番手っ取り早くて安全なのは、バックアップからサイトを復元することだ。
だからこそ、定期的な自動バックアップは、自動更新を設定する上での生命線になる。僕が使ってるレンタルサーバーには、過去14日分のバックアップを自動で取ってくれる機能があるから、本当に助かってる。こういう保険があるからこそ、自動更新という便利な機能と、うまく付き合っていけるんだ。
よくある質問(FAQ)
最後に、クライアントからよく聞かれる質問に答えておくね。
Q1. WooCommerceみたいなECサイトで、自動更新はONにしても大丈夫?
A1. 絶対にやめた方がいい。ECサイトは、決済という超重要な機能が絡んでいるから、少しの不具合が大きな売上損失に直結する。特に、WooCommerce本体や、決済ゲートウェイのプラグインは、必ずステージング環境でテストしてから、慎重に手動でアップデートすべきだ。コアのマイナーアップデートだけを有効にして、あとはすべて手動、これが鉄則だよ。
Q2. 自動更新されたかどうか、どうやったら分かるの?
A2. WordPress 6.1から、コア、プラグイン、テーマの自動更新が成功または失敗した時に、サイト管理者にメールで通知が届くようになったんだ。これで、知らないうちに何かが起きていた、という事態は防ぎやすくなったね。また、多くのセキュリティプラグインには、ファイル変更を検知して通知する機能もあるから、併用するとさらに安心だ。
Q3. レンタルサーバー側で、勝手にアップデートされることってある?
A3. ある。一部のマネージドWordPressホスティング(KUSANAGIとか)では、サーバー側で強制的にマイナーアップデートを適用することがある。これは、サーバー全体のセキュリティを維持するためだから、基本的には良いことだ。でも、自分の意図しないタイミングで更新されるのが嫌なら、ホスティングサービスの仕様を事前に確認しておこう。
Q4. ステージング環境って、どうやって作るの?
A4. 最近の主要なレンタルサーバー(Xserver, ConoHa WINGなど)には、ボタン一つで本番サイトのコピー(ステージング環境)を作成できる機能が付いていることが多い。これを使えば、安全な場所でアップデートのテストができるから、絶対に活用すべきだよ。もしサーバーに機能がなければ、「WP Staging」みたいなプラグインを使う手もある。
まとめ:自動更新は「賢く付き合う」パートナー
今日の話をまとめよう。
- 自動更新は、セキュリティ向上と手間削減の大きなメリットがある「諸刃の剣」
 - しかし、互換性の問題でサイトが壊れるという、致命的なデメリットも存在する
 - プロの「黄金設定」は、コアのマイナーアップデートのみ自動化し、他は手動更新
 wp-config.phpとfunctions.phpで、更新範囲を細かく制御しよう- 自動更新を運用するなら、自動バックアップとステージング環境は「生命線」
 
自動更新は、決して「ONかOFFか」の二択で考えるべき機能じゃない。それぞれのメリット・デメリットを正しく理解して、自分のサイトのリスク許容度に合わせて、細かく設定を調整していく。そして、万が一の時のために、バックアップという保険を必ずかけておく。
まるで、ちょっと気まぐれだけど、仕事はできるパートナーと付き合うような感覚かな。相手の性格をよく理解して、うまく手綱を握ることで、最高のパフォーマンスを発揮してくれる。
この記事が、あなたが自動更新という強力なパートナーと、末永く、そして安全に付き合っていくための一助となれば、これほど嬉しいことはないよ。
WordPressのセキュリティ、不安に思っていませんか?
「自分のサイトは大丈夫だろうか…」
「何から手をつければいいか分からない…」
もしあなたが少しでもそう感じているなら、専門家によるセキュリティ診断を受けてみることを強くお勧めします。
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