「表示が崩れているところを直してほしい」という依頼に、いくらの見積りが返ってくるのか。数千円のこともあれば、十万円を超えることもあります。同じ「修正」という言葉で呼ばれているのに10倍以上の差が出るのは、作業した時間の差ではありません。当社でこれまで受けた修正案件は323件あり、その実額をすべて並べると、どこに分かれ目があるのかがはっきり見えます。実額の分布から、小口と大口が何によって分かれるのかを書きます。
実際の金額はここに集まっている
| 価格帯 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 5,000円未満 | 83件 | 39.9% |
| 5,000〜9,999円 | 64件 | 30.8% |
| 10,000〜19,999円 | 36件 | 17.3% |
| 20,000〜29,999円 | 8件 | 3.8% |
| 30,000〜49,999円 | 13件 | 6.2% |
| 50,000〜99,999円 | 3件 | 1.4% |
| 100,000円以上 | 1件 | 0.5% |
中央値は6,000円、平均は約12,600円です。平均が中央値の倍近くあるのは、少数の大きい案件が引っ張っているためで、実感としては中央値のほうが近いところです。1万円以下が229件で全体の71%、2万円以下まで広げると275件、85%に達します。最も小さい案件は500円、最も大きい案件は36万円でした。つまり「WordPressの修正」と呼ばれる仕事の8割以上は2万円以下で終わっていて、それを超えるものは修正ではなく別の何かに変わっている、という分布です。
金額を決めているのは、作業時間ではなく原因特定の深さ
修正の費用は、おおまかに4つの要素でできています。原因を切り分ける時間、実際に直す時間、直したことで他が壊れていないか確認する時間、そしてそのサイトの環境を把握する時間です。このうち依頼する側から見えているのは2つ目だけで、多くの場合そこが最も短い。ボタンの色を変える作業は3分ですが、そのボタンがどのファイルから出力されていて、なぜCSSが効いていないのかを突き止めるまでに1時間かかることがあります。
だから「作業自体は簡単ですよね」という感覚と見積り金額が食い違います。逆に言えば、原因がすでに分かっている状態で依頼できれば費用は下がります。エラーメッセージの全文、いつから起きているか、直前に何をしたか、特定のページだけか全ページか。この4つが揃っているだけで、切り分けの時間が目に見えて短くなります。
環境の把握も金額に効きます。独自テーマで、誰がいつ書いたか分からないコードが入っていて、プラグインが30本入っているサイトは、同じ症状でも調査に倍の時間がかかります。逆に、以前から継続して見ているサイトなら、この部分がまるごと不要になります。継続的に触っているサイトの修正費用が安く見えるのは、この差です。保守の中で対応する形にすると1件ごとの見積りが要らなくなるのも同じ理由になります。
1万円以下で終わる修正は、どういうものか
ネットショップの商品ページで「数量を変えてもカートに1個しか入らない」という相談を受けたことがあります。金額は1,000円。実際にやったのは、商品ページのHTMLを見て「カートに入れる」フォームが2つ配置されていることを指摘しただけです。同じ名前の数量入力欄がページ内に2つあると、後から出てきたほうの値が送信内容を上書きします。利用者が上のフォームで指定した数量は、送信された時点で捨てられていました。
この案件では、どのブロックを消せば直るかを伝えたところ、依頼された方がページ下部のブロックを自分で削除して解決しています。修正作業は発生していません。それでも価値があるのは、この原因に自力で辿り着くのは難しいからです。数量が反映されない症状から「フォームが二重にある」に行き着くには、そのプラグインの出力の仕方を知っている必要があります。1万円以下の帯には、こういう「原因を教えてもらえれば自分で直せる」タイプがかなりの割合で含まれます。
もう1件、物件検索の絞り込みが正しく効かないという修正が6,000円でした。カスタムフィールドで条件検索を組んだサイトでよく出る症状で、原因はだいたい3つに絞られます。価格や面積の範囲検索で数値が文字列として比較されている(型の指定漏れ)、複数条件を組み合わせるときの relation の指定や入れ子の構造が誤っている、未入力の条件まで検索条件の配列に入れてしまっていて、空欄なのに絞り込みが効いてしまう。どれも原因が分かれば修正は数行です。
1万円台から2万円台に入るのは、原因が1つでないとき
個人が運営している食べ物系の情報サイトで、表示がおかしいという相談から始まった案件は、最終的に18,000円になりました。金額が積み上がったのは、原因が3つあったからです。1つ目は、テーマの中に loop-index.php というテンプレートファイルが物理的に存在していなかったこと。コードを読む前に、テーマフォルダのファイル一覧を見た時点で分かりました。制作者が変わっている、あるいはテーマを移した経緯のあるサイトでは、ファイルが欠けたままになっていることが実際にあります。
2つ目のサイドバーの崩れは、テーマ側ではなく記事本文のHTMLの記述誤りが原因でした。ここが重要なところで、特定のページだけで崩れるならコンテンツ側、全ページで崩れるならテーマ側という切り分けが先に立ちます。これを間違えると、テーマを何時間触っても直りません。この案件では原因を伝えたうえで、記事1本のHTMLを直すだけなので依頼された方が自分で対応する形になりました。3つ目は検索結果ページ(search.php)の不具合です。
不具合が複数あるときは、1件ずつ原因と費用を出してもらい、やるかどうかをそのつど決められる形にしたほうが、依頼する側にとって有利です。「一式で見ます」とまとめられると、途中で不要になった作業や、自分でできると分かった作業を切り離せなくなります。
別の案件では、モバイルで見たときだけ記事が二重に表示されるという症状の調査と対処で、見積りが12,000円でした。原因はモバイル専用テーマを差し込むプラグインで、テーマ側のループと衝突して同じ内容を2回出力していました。PCでは再現せずスマートフォンだけで起きるなら、まずこの種のプラグインを疑います。ただしこの対処は応急処置で、プラグインやテーマが更新されれば再発します。見積りを受け取る側としては、提示された対処が恒久的なものか、その場をしのぐものかを聞いておくべき場面です。
3万円を超えるものは、たいてい修正ではない
分布で見ると3万円以上は17件、全体の8%です。この帯に入るのは、複数ページにまたがるデザイン変更、レイアウトの作り直し、既存機能への機能追加といった内容で、症状を1つ直すという性質のものではありません。最も高額だった36万円の案件は、検索機能と地図表示の新規追加でした。名目は改修ですが、中身は開発です。
依頼する側が気をつけるのは、自分の要望がどちら側にあるかを見誤らないことです。「今あるものを直す」なら1〜2万円の世界、「今ないものを足す」なら数万円から上の世界で、この境目は作業量ではなく性質で決まります。新しく作る側の相場観はWordPressサイト制作の価格帯と、その中身がどう違うのかのほうが近く、会員機能のように仕組みが増えるものは会員制サイトの構築費用は、どこで大きく変わるのかを実額で見るで扱っています。
見積りを受け取ったときに確かめること
金額の妥当性を判断するには、その数字に何が含まれているかを聞くのが早い。特に確かめる価値があるのは4点です。調査だけで終わった場合の費用はどうなるのか、調べた結果が想定と違う原因だったときに金額は変わるのか、提示されている対処は恒久的なものか応急処置か、そして直したあとにどこまで動作を確認してくれるのか。
最後の点は決済まわりで特に効きます。カートや注文フォームを触った場合、数量の変更からカート投入、カート画面での確認、注文確定の手前まで通しで見ないと、直したつもりで別の場所を壊していることがあります。またPHPファイルを編集したあとに headers already sent という警告が画面上部に出ることがありますが、これは閉じタグの後ろに残った空白や改行が原因で、放置すると決済の処理が止まります。作業完了時にこの表示が消えているかは、依頼した側でも目視で確認できます。
移行や引っ越しを伴う場合は費用の考え方がまた変わるので、サーバー移行の費用が業者ごとに違う理由と、実際の価格帯も見比べてください。
よくある質問
調査だけを先に頼むことはできますか
できます。原因が分かった時点で自分で直せる内容なら、そこで終わりにして構いません。実際、原因を伝えた時点で依頼された方が対応し、修正作業が発生しなかった案件があります。修正まで一括で頼むより、調査と修正を分けたほうが結果的に安くなる場面はあります。
500円や1,000円の修正が本当にあるのですか
分布のとおり、最小は500円です。ただしこれは「原因の指摘だけ」「1行の書き換えだけ」といった、切り分けが一瞬で終わる内容に限られます。同じ症状でも、環境を把握するところから始める場合は同じ金額にはなりません。
見積りが他社と大きく違うのですが、何を比べればいいですか
作業内容の粒度を比べてください。「不具合修正一式」と書かれた見積りは、原因の数も確認範囲も分かりません。原因ごとに項目が分かれていて、それぞれに金額と、恒久対応か応急処置かが書かれているものは、あとから増える要素が少なくなります。
直したあとにまた同じところが壊れることはありますか
あります。応急処置で止めた場合、プラグインやテーマの更新で再発します。またコンテンツ側の記述が原因だったものは、同じ書き方で記事を書けば再び起きます。再発を避けたいなら、対処の内容とあわせて「なぜそうなったか」を記録として受け取っておくことをおすすめします。
